こんにちは、みちのくです。
公開当時から気になっていた『そして父になる』をAmazonプライム・ビデオで視聴しました。
映画のレビュー記事を書くのは初めてなので、うまく伝わるか自信ありませんが…書きます。
よろしければおつきあいくださいませ。
なお、ネタバレになる内容も含まれますので、「そんなの知りたくないよ~」というかたはご遠慮ください。
- 『そして父になる』あらすじ
- 対照的な2つの家族
- 「血のつながり」か「過ごした時間」か
- 正式に子どもを交換することが決まったけれど…
- 変化していく野々宮夫妻と、変わらない斎木夫妻
- まとめ:観おわって感じたこと
『そして父になる』あらすじ
出典:https://eiga.com/movie/58060/gallery/
大手建設会社に勤め、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多(福山雅治)。ある日、産院からの電話で、6歳になる息子が取り違えられた他人の子だと判明する。妻のみどり(尾野真千子)は気づかなかった自分を責め、一方良多は、優しすぎる息子に抱いていた不満の意味を知る。良多は、相手方の家族と戸惑いながらも交流を始めるが、群馬で小さな電気店を営む斎木雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木ようこ)夫婦の粗野な言動が気に入らない。過去取り違え事件では100%血のつながりをとるというが、息子に一心な愛情を注いできたみどりと、温かでにぎやかな家族を築いてきた斎木夫婦は、育てた子を手放すことに苦しむ。早い方がいいという良多の意見で、ついに“交換”が決まるが、そこから、良多の本当の“父”としての葛藤が始まる―。
対照的な2つの家族
野々宮良多の家族
出典:https://eiga.com/movie/58060/gallery/3/
福山雅治さん演じる野々宮良多(ののみやりょうた)は一流企業に勤めるエリート会社員。
妻のみどり(尾野真千子さん)と、6歳になったばかりの息子・慶多(けいた)と3人でタワーマンションに住み、裕福な暮らしをしています。
ま、言ってみれば “人生の勝ち組” とでもいえる人物でしょうか。
でもこの良多、優秀ではありますが、ちょっと人の気持ちがわからないようなところがあって、冷たい面もあります。
でもそれはもしかしたら、彼が複雑な家庭で育ったからかもしれません。
幼いころに両親は離婚。父親はべつの女性と再婚して、良多と兄はその継母に育てられたのです。
そして取りちがえ事件の相手方、リリー・フランキーさん演じる斎木雄大(さいきゆうだい)との会話でもでてきますが、
良多の父親は子どもといっしょに遊んであげるような父親ではありませんでした。
また、良多と兄が家に来ているとき、「となりのピアノの音がうるさい」と言い、
「聞こえますよ」と息子に言われると、「わざと聞こえるように言ってるんだよ!」と怒鳴るような人です。
…うーん、やっぱり親がそうだと、子どもも同じような人間になっちゃうんでしょうかね。
現に、良多も自分の父親とおなじように、子どもと一緒になって遊ぶような父親にはなっていませんでしたから。
それに、「なんでも一人でできるようになってほしいから」という理由で、お風呂に入るときも寝るときも、慶多は一人でした。良多の教育方針のようです。
(そのシーンは出てきませんが、雄大のセリフからわかります)
そして良多の父親は「親子は過ごした年月より“血” だ」と言って、子どもをできるだけ早く交換するよう良多につよく勧めます。
斎木雄大の家族
出典:https://eiga.com/movie/58060/gallery/6/
対する斎木家。
リリー・フランキーさん演じる斎木雄大(さいきゆうだい)は群馬で小さな電気屋さんを営んでいます。
家族は妻のゆかりと3人の子どもたち、それにゆかりの父親の6人家族。
暮らし向きは楽ではないようです。
妻のゆかりを演じるのは真木よう子さんです。
斎木夫妻はふたり揃っておおらかで温かい人柄なんですが、ちょっと粗野なところがあります。約束の時間にはいつも遅れます。
最初の、家族での交流では大型ショッピングモールのフードコートでみんなで食事をしたのですが…
そのとき、父親の雄大も息子の琉晴(りゅうせい)もストローを噛んでつぶすクセがあるのを見た良多は、嫌悪感をおぼえます。
(わたしも、イヤだな…と思いました笑)
是枝裕和監督は、対照的な2つの家族をよりわかりやすく対比させるために、
あえてオーバー気味に演出したのだろうと思いますが、見ていていろいろとツッコミどころがあります😅(琉晴にお箸の持ち方を教えてなかったり…)
そんな感じで野々宮家とはことごとく正反対の斎木家。
たとえばお風呂も、野々宮家では慶多がひとりで入っていたのに対し、斎木家では雄大が子どもたち全員を入れてあげていました。
そしてお風呂がすんだあと雄大が「よしっ!じゃあみんなで寝よう!」と言って、家族みんなで寝ます(楽しそう🥰)
良多が子どもと一緒になって遊ぶ父親ではないのに対し、雄大は全力で子どもと遊びます。「はあ~、しんど!」と言いながら。
いよいよ明日は正式に子どもを交換する、という日、2つの家族は川に遊びに行きます。
河原で雄大は、子どものころ父親が手作りの凧を作ってくれた思い出を良多に話すんですね。
「新聞紙をこう…細く切って足をつけて…」と。
『あ~、やっぱり雄大の父親は雄大とおなじで、子どもといっしょに遊んでくれるお父さんだったのね』と納得しました。
そして雄大のやさしさが現れていた、印象的なシーンの1つ。
2つの家族が交流をしていたフードコートで帰りぎわに雄大は、テイクアウトを1つ注文します。
そして良多に「あいつ(ゆかり)の親父が家で腹すかして待ってるから」と説明。
これってどうですか。
妻の父親と同居するってなったとき、たいていの男性はそれを受け入れにくく感じるのではないでしょうか。どういうものでしょう。
でも雄大は妻の父親と同居していることをとくに不満に感じているふうでもなく、その義父の食事のことを気にかけてあげます。
雄大の温かい人柄がよく出ているシーンだと思いました。
好きなシーンのひとつです。
「もう、半分ボケちゃってて…」とか口は悪いんですけどね(笑)
いっぽう妻のゆかりも、子どもたちを交換する前の日、河原で涙ぐむみどりをそっと抱きしめるような、そんなやさしい女性です。
雄大は良多のようにエリートではないし、家も裕福ではないし、雄大もゆかりもお世辞にも品があるとは言えないけれど、
でも、あったかくてやさしくて思いやりがある。
斎木夫妻はそんな人たちです。
「血のつながり」か「過ごした時間」か
出典:https://eiga.com/movie/58060/gallery/2/
6年間育ててきた息子が自分の子ではなかった、という事実を知って2つの家族は苦悩します。
一人っ子として大切に大切に、慶太に愛情を注いできたみどりは、慶太を手放したくはありません。
ゆかりも、父親に言われて子どもを交換することを急ごうとする良多にこう言います。
「似てるとか似てないとかそんなことにこだわってるのは、子どもと繋がってるって実感のない男だけよ」
そのように母親ふたりは、子どもを交換することに否定的です。
「血」ではなく「過ごした時間」のほうを取りたいと思っているのです。
でも良多は自分の父親が言ったことに同意し、「血」を優先すべきだと考えます。
雄大がどう感じているのかは描かれていませんでしたが、結局、何度かのおためしお泊りのあと、正式に子どもを交換することが決まります。
正式に子どもを交換することが決まったけれど…
ついに、正式に子どもを交換することが決まりました。
でもそのときわたしは、『ムリ、ムリ、ムリ。6年もの間まったくちがう環境で育ってきたものを、今さら変えるなんてムリ!』と思いました。
じっさい見ていて、ふたりの子ども、慶多と琉晴がかわいそうでした。
斎木家をあとにして走り去る良多の車を見送るときの、慶太の表情。切ないです。
もしかしたら『ぼくはパパに捨てられたんだ…』と感じていたのかもしれません。
その気持ちが、ラストの良多との会話に現れています。
「パパなんか、パパじゃない!」
そして琉晴。
野々宮家に着くと、決まりごとを書いた紙を良多から渡されます。
その紙には良多とみどりを「パパ、ママと呼ぶように」とも書かれているのですが、当然、琉晴はそれをすんなりと受け入れることはできません。
「なんで?なんで?」としつこく食い下がって良多を困らせます。
変化していく野々宮夫妻と、変わらない斎木夫妻
斎木家との交流をとおして、野々宮夫妻は少しずつ変わっていきます。
とくに変化が大きいのは良多ですが、妻のみどりにも変化が。
それまでは、仕事優先で家族との時間をあまり持たなかった(持てなかった)良多に、遠回しにやんわりと嫌味を言うだけでした。
でも斎木家との交流が始まってゆかりと話すようになるうち、良多に不満をもっていることを、言い回しや声の調子でストレートに伝えるようになります。
そして良多です。
これまで順風満帆でやってきた良多。
きっと自分はりっぱな父親、良い父親だと思って、慶多との6年間を過ごしてきたにちがいありません。
でも雄大と交流し会話を重ねるうちに、少しずつ自分の中の“良いお父さん像”がくずれていきます。
「赤ん坊とりちがえ事件」というできごとがなければ、良多にとって斎木夫妻は、もしかしたら一生関わることのなかったタイプの人たちかもしれません。
それぐらい、斎木夫妻は何から何まで野々宮夫妻とは違っていて(←良多の中では悪い意味で)、良多は斎木夫妻を見下しています。
でもその見下している雄大から、良多は父親として大切なことをたくさん学んでいくのです。
雄大と良多の会話はとても心に残ります。
この雄大がまた、いいことを言ってくれるんですよ~。
わたしは雄大のことばを聞きながら心のなかで、『そうだ、そうだ!よく言った!』と拍手をおくっていました。大事なことってそれだよね、って。
そんな会話をとおして、良多のなかで”なにか”が少しずつ変わっていきます。
そのようにして、野々宮夫妻は少しずつ変化していくのですが、かたや斎木夫妻は最初からまったく変わっていません。
最初から最後まで変わらず、あったかくて、やさしいまんま。
どっしりとして安心できるやさしさなんです(品がないのがちょっとアレなんですけど笑)
まとめ:観おわって感じたこと
最初、タイトル『そして父になる』の意味がよくわかりませんでした。
『え?父じゃん。最初から父でしょ?』と。
でも観おわったあと、そのタイトルの意味がよくわかり、ストンと納得。
この映画は野々宮良多という男性の、父としての成長物語です。
それまでの良多にとっては見下すような人たち、斎木夫妻との関わりをとおして、良多はほんとうの意味での “父” になっていきます。
映画の中では雄大と対比させて悪者みたいに描かれている良多ですが、良多だってけっして慶太を愛していないわけではないと思うんです。
ただ、愛し方がわからない。
けっきょく人って、なにか大きく影響を受けるものに出会わないかぎり、自分が育てられたようにしか子どもを育てられないんじゃないでしょうか。
だって、それしか知らないから。
でも良多は雄大と出会うことでその連鎖を断ち切るきっかけが得られたのでしょう。
ほんとうによかった…と思いました。
ただ1つ、疑問というか残念に思ったことがあります。
それは両方の親が、子どもに何も事情を話さなかったことです。
6歳ともなれば、あるていどの分別はつくと思うのです。
親たちだけで決めてしまうのではなく、慶多と琉晴にきちんと真実を告げて、「あなたはどうしたい?」ときいてほしかった。
…と、個人的には思います。
ラストのシーンを見ると、もう子どもの交換はとりやめて、もとに戻るように見えます。
でも本当のところはわかりません。
もし仮に、それぞれがもとの生活に戻ったとしても、この先いろいろと問題は出てくるでしょう。
だとしても、この2つの家族はきっと乗りこえていけるんじゃないかな、と思えました。
この「赤ん坊とりちがえ事件」という悲しいできごとをとおして、家族の絆がよりいっそう強くなっただろうと想像できるからです。
この映画を観ていちばんに感じたことは、
家族の絆、親子の絆って、血のつながりだけが全てじゃないんだな、ってこと。
ともに過ごした時間、たがいに示しあった愛情、そういうものによって家族の絆、親子の絆は作られていき、強く結ばれていくもの。
それが、是枝監督が言いたかったことなんじゃないかな、と思いました。
それは監督の別の作品『万引き家族』にも共通していると感じます。
わたしはこの映画『そして父になる』を観おわったあと、さわやかな気持ちになれました。
いい映画だと思います。
興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。
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この記事をお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。